NP制度は看護師に仕事を押し付けて医師が楽になるだけなのか?

「NP制度は看護師に仕事を押し付けて医師が楽になるだけなのか?」と、看護師不足が深刻な日本でよく聞かれる疑問ですが、アメリカではどうなのでしょうか。アメリカも、海外ナースにより多少解決してきたとはいえ、もちろん激しい看護師不足に悩んでいます。

プライマリーケア(外来)でいうと、簡単な症例はNPにまわされる傾向が津用ので、確かに「風邪とか簡単なものは診なくてすんで嬉しい」という医師もいますが、これは悪いことではありません。なぜなら、多くのNPは喜んで風邪を診るからです。それでも、実は風邪でなくて肺がんであることを突き止めたり、もしただの風邪でも、ついでにマモグラフィーはいつだった?50歳以上の人はするべき大腸カメラは?というようなことを聞いて、せっかく医療機関に入ってくれた機会に患者さんの健康をトータルに診てしまう、というのは、どれもものすごくやりがいのある仕事だからです。(Believe me, this is extremely fun.) 逆に、私たちNPの多くはとても難しい症例は医師に回すことが多いです。「分からないと恥ずかしい」「よく分からないけれど、私がやってみたい」とは言っていられません。患者さんの命がかかっているし、自分たちは医師のように4年間の学校と3-7年のレジデンシーをやってないので、専門的な知識は医師の方が深いことがほとんどです。それでいいんです。その代わり、患者さんのトータルな健康に気遣える教育を受けたNPの私たちは、医師が気が付かなかった意外な事実を、患者さんから聞き出して、結果的に患者さんを助けるというようなことに長けているからです。例えば、実は薬が効いていないのではなく、薬を買うお金がないので一日おきに服用していた、などなど。(そのような例なら、たくさん挙げられるます。今度書きますね。)また、色々な予防の話を健診中にするのにもNPは慣れています。医師はもちろん、多くの難しい症例にフォーカスすることで、やりがいのある仕事に専念できるでしょう。そういう医師とNPがいるクリニックは、健康な子供の健康診断が求められても、92歳の腎不全、肝不全、色々不全のおばあちゃんが来ようとも、どーんと対応ができ、しかもいいケアを提供できるわけです。

入院患者でいうと、私は病院で働いた経験がないので、これらはインタビューした人々から聞き出したものですが、医師からはNPやPAについて「NP・PAがいて助かった」「NP・PAなしではもう仕事できない」という声はとてもよく聞きました。さて、NPやPAは仕事を押し付けられて嫌がっているのでしょうか?ICUで聞いたところ、ICU医師は、最終的に自分に患者の責任があるので、うちでもポケベルは手放せないし、よく居残って仕事をすると言っていました。対して、NPやPAは、「シフト・ワーカー」なので、自分のシフトが終わったらさっさと次の人に任せてうちに帰れるし、うちは仕事のことを考えなくて済むと答えていました。YALE病院ではまた、NPやPAは9時―5時しか働かなくてよく、夜は全てインターンMDでまかなわれているそうです。つまり、NPやPAは夜勤がないのです。「子供を生みたいと思っていたので」医師になる代わりにPAになったある人は、現在子供を生み、働きながら育てています。

術後の管理などはNPやPAに任せて、ICU医師は特に容態の悪い患者さんを診てまわるのが仕事だそうです。

とある看護師さんが言ったことですが、もし医師のいない時に患者さんにある薬が必要になっても、医師に電話しなければいけないと、オフだった医師も嫌がるし、薬を出すのに多少時間がかかる。それが、現場にひとりNPがいれば、NPのもとに持っていってNPが処方できるので、看護師にも医師にも楽である。NPは翌日、その医師が来たときに、薬の処方について報告して引継ぎする。NPが、これは手に負えないと判断したら、すぐにでも医師を呼ぶ、とのことでした。

これはまさに、チームワークであり、医師が楽をして、NPに押しつけている感じではありませんでした。

ただし、一人、乳がん外来のNPの人が、「秘書的なことを頼まれすぎてバランスが難しい」と言っていました。私も、ついつい医師に頼まれればNPや看護師どころか秘書がやるべき仕事までつい請け負ってしまい、時間がなくなって困ったことがありました。そうすると医院の金銭的に見ても、私自身の希望から見ても、NPとしての私の価値が生かされないことになります(私は患者を多く診て診療代を稼ぐのが仕事なので、電話して患者さんの予約を取ることなどはできるだけ秘書の人に任せて、自分の仕事に専念するのが良い)。そういうことにならないように、医師とはっきりとコミュニケーションすることが重要で、「医師がNPに押し付けてしまう」ことを予防することで、国全体の医療費の観点から見ても、医師、NP、看護師の立場から見ても、より有意義なNPという役割が築けるのではないでしょうか。

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ここに書いたことは、あくまでもアメリカでの現状であり、日本でこうなるとは限りません。それどころか、アメリカより国民一人あたりの医療費がうそのように低い日本では、人件費にお金を割いていないので、NPを足してもa drop in an ocean で、結局、病院内のNPもRN(看護師)も医師もみんなで更に過剰労働して、疲弊していく・・・という現状になる可能性もあると思います。(もちろん、外来では違うかもしれませんが。)そうすると、NPになれば何かが変わるかもしれないと思ってNPになった看護師さんががっかりして、優秀な人材が無駄にならないとも限りません。

もちろん、海外から言うは易し、行うは難しなのは分かってて書くのですが、日本の医療は少し安すぎるような気がします。医療費の対GDPは沸く8%と、先進国の中では一番低いと聞きます。国連も称えるcost effectiveな日本の医療制度を、とても誇りに思っているのですが、医療費全体を引き上げて医師も看護師も多く雇えるような状況に病院を持っていかないと、今懸念される「医療崩壊」は避けがたいのではないでしょうか。
忙しい病棟で、NPはついつい人手の足りていない看護師の仕事をしていたり、医師に秘書的なことを多く頼まれる、ということが続くと、自分の知識や能力以下のポジションで働き続けることになり、本来の力を発揮できないでしょう。日本でのNPは解決策の一部となると思いますが、根本的な医療改革なしでは、NP制度は長続きしないのではないかと心配です。

もちろん、医療費が年々莫大に膨らむアメリカは逆の方向に大問題で、そのために破産したり死に至るケースを私は見たり聞いたりし、日本ではこんなことは起こらないよといつも同僚に自慢しているのですが・・・

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