「ダイエットはいやだから手術にしてください」

先週もどかしい出来事があった。

30代後半の男性の患者さんが来た。来院の理由は、体重を減らす手術をしたいこと。体重が200キロ近く(推定。うちの体重計は300パウンド、つまり160キロまでしか計れない)身長が5ft5inch(165cm)なので、BMIは60を超えている。
病歴はなし。


まあ、そこまでは普通なのだが、
とりあえず診察すると、血圧が高い(146/82)ことがわかった。
心電図や心音などは正常。

そこで、体重を減らす手術の専門医の電話番号をあげ、手術は保険が払うのが難しいこと、保険が払うためには、6ヶ月以上栄養士にかかり、運動もしても体重が減らなかったことを示さなければいけないことなどを説明した。
歩く運動や、水泳、そしてカロリーの説明をし、ダイエットのパンフレットまであげた。

また、コレステロールと血糖値などを調べるため、血液検査にも送り出した。

また、1回血圧が高いだけだと「高血圧」の診断にはならないので、1週間後にまた来てもらった。

1週間後に来た彼の血圧は、やはり高いまま。
血液検査を見ると、空腹時血糖値が106と、Pre-diabetesの値であった。

「手術医に電話した?」
と聞くと、
「忙しくてまだ電話してない」
との答え。

「歩くのは始めてみた?食べるものには気を使ってみた?」
と聞くと、大きくため息をついて、

「あのさー、正直に言うけど、運動とか、好きじゃないんだよ。多分、絶対しないと思う。ダイエットっていっても、ぼくの彼女は料理がすごくうまいしさ。だから体重減らす薬か手術がいいんだけど。」

「でも、手術は保険が払うまでにだいぶ時間がかかるだろうし、保険がカバーしないこともあるし、手術も薬もいろいろ副作用があるし、ダイエットと薬を一緒にやらないとあまり効かないのよ。あなたは、糖尿病ではないけれど、血糖値が高いから、今からダイエットや運動をすれば、糖尿病になるのを予防することができるかもしれないのよ。」
と説明すると、

「え!血糖値が高いの。それなのに薬くれないんの。ぼくが糖尿病になったらどうするんだよ。」との返事。

「Pre-diabetesでの薬の使用は、色々副作用もあるし、その使用については是非が問われているの。(metforminのことです)だから、まず運動とダイエットをして、3ヶ月後にまた計ってみましょう。今は、血圧の薬をスタートするから、一気にふたつの薬を始めない方が腎臓にもいいと思うの。(lisinoprilを処方する予定で、こう言いました)」

(注:この患者さんは多尿などの自覚症状がありませんでした。次のステップとして、2hour oral glucose tolerance testでさらに詳しく糖尿病か否かを調べる手もあるが、これは時間がかかるので大抵の患者さんはいやがるし、初期の糖尿病か、pre-diabetesかの違いがわかったところで、対処法は同じなので、私は3ヶ月後にもう一回空腹時血糖値とA1Cを合わせてチェックすることが多い。その再診の際、食後血糖値もオフィスでチェックする。ちなみにA1Cは決して診断には使うなと長年言われてきたが、診断の参考にしてもいいというニュースがつい2週間前に発表されたばかりだが、まだAmerican diabetes associationは正式に決めていない)

そうしたら、彼の反応は、

「えーっ だから運動は嫌いだって言ってるじゃないか~」

ってな感じで、とほほ。。。

体重減らす手術(Gastric bypass, lap band など)をしている人は、ものすごく増えている。結果、痩せすぎて危険になった患者さんもいるし、毎日吐いている人もいるし、全然痩せなかった人もいるが、私が見る限り大体においてかなりみんなハッピーである。しかし、医療費が非常に高く、(保険がカバーした場合、患者の払う額は微々たるものだが、医療費全体への影響は大きい)また、リスクの伴う手術を考える前に、運動やダイエットをしようとしない患者さんが多く、もどかしい気持ちを覚える。

そんな他人任せで、気軽に手術という手を選んでいいのだろうか。。。

悩む日々だが、彼が手術へアクセスしたいのはもちろん助けなければいけない。

ふう。

日本でもこういう患者さんっていっぱいいますか?



*****

余談だが、ラジオで、メトリックシステム(キロとメートル)を取り入れましょうと世界的に取り決めた時に、従わなかったのは、ミャンマーと、アフリカのどこかの国(リベリアかな。忘れた)と、アメリカ合衆国だったらしい。

アメリカの頑固な自分第一主義なところがちょっとわかる、エピソードですよね。

Comments

Unknown

服のサイズの話ですが、6年ぶりにアメリカで暮らしている両親は、「アメリカの服のサイズがいない間に大きくなった」と言います。サイズ8だったのに、今は同じブランドのサイズ6でも入るという話。しかも、体重はちょっと増えているのに。私もそうなんですが、これはやはりアメリカのサイズの標準自体がずりずりと上がっていると考えてよさそうです。
痩せ過ぎも困るし、拒食症もとても難しい病気だけれど、国全体でここ10年一気に太ってきたというのも、大問題ですよね。

緒方さやか


服が着られなくなる危機感がない

日本はまだ、肥満といっても、アメリカほどextremeな肥満は少ないとおもうの。日本では、太っちゃうと着られる服が極端に減るけど、アメリカはいくらでも大きなサイズがあるから、たぶん危機感をもつチャンスがあまりないのよねー。そして周りに太っている人があまりに多いから、自分が太っているというという自覚すらない人も少なくないとおもう。

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